研究概要 |
種々の細胞刺激に対する細胞内情報伝達に深く関与することが知られる生体膜主要リン脂質ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンの生合成調節機構を解明する目的で、その生合成初段階調節酵素コリン(エタノールアミン)キナーゼ(CK,EK)のcDNAをラット腎cDNAライブラリーからクローニングする仕事を行った。本酵素は動物組織において幾つかのisozymeとして存在し、主要な肝型酵素については既に別の研究グループによりそのcDNAクローニングが成され、蛋白の一次構造も明らかになっている。我々の手掛けている主要な腎型酵素は肝型のものに比べて分子量がはるかに小さく、アミノ酸配列の共通性もほとんど認められない事実から、肝型とは別の遺伝子物産であることが推定される。リン脂質生合成系において、組織(臓器)特異的な酵素遺伝子の発現に関しては他に例が無く、本酵素の(臓器特異的な)発現調節機構を知ることは、リン脂質生合成の調節機構全体を解明する上で極めて重要である。本研究では、既に我々の手によって成功した手法に準じて先ず、ラット腎可溶性画分より42kDaCK(EK)を純化し、そのSDS-PAGEバンドから蛋白消化酵素処理によって生じたペプチドをHPLCで精製した。次に数種の主要なペプチドについてそのアミノ酸配列を決定し、その中の幾つかについて対応する混合オリゴヌクレオチドプローブを作成した。これらのプローブ(3′-DIG ラベル)を用いて別途に作成したラット腎cDNAライブラリー(λgt10)からプラークハイブリダイゼーション法により、1次および2次スクリーニングを行った。検出された陽性プラークについて更に各種PCR法およびpUC18/19を用いたサブクローニングを行い、最終的にPCRサイクルシークエンス法による塩基配列の解析を行っている。近い将来、腎型CK(EK)のcDNAクローニングが成され、その一次構造の解析ならびに本遺伝子の臓器特異的な発現調節機構を明らかにすることができるものと考えている。
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