肝臓と腎臓のホスファチジルコリン(PC)の分子種組成に対するクロフィブラートの影響を代謝生化学的に明らかにし、腎臓のリン脂質の分子種組成の肝臓からの独立性と肝臓への依存性について検討した。 (1)クロフェブラートをラットに投与すると、肝臓中のホスファチジルエタノールアミン(PE)が増える。これはPEメチル化の抑制、PC→ホスファチジルセリン→PE系の亢進およびPE代謝回転の抑制に起因するものであり、PEのde novo合成系はむしろこの薬物で抑制された。 (2)クロフィブラートはラット肝臓のPCのパルミチル-オレイル分子種のde novo合成を亢進した。一方、肝臓のPC中のパルミチル-アラキドニル分子種に比べると、ステアリル-アラキドニル分子種はクロフィブラートの投与で著しく減少するが、これはPEのメチル化で生成するステアリル-アラキドニル分子種が減少するためであることが判明した。 (3)クロフィブラートの投与で肝臓中のステアリル-アラキドニル分子種が減少し、これに伴って血液中のアラキドン酸を含むリン脂質が減少した。この変化の影響を受けて腎臓中のアラキドン酸を含むPCは減少した。一方、肝臓とは異なり、腎臓はde novo合成されるジパルミチルPCをPCの最多成分として20%も含んでいることが明らかになった。さらに、この分子種はクロフィブラートの投与で激減した。 現在、クロフィブラートによる肝臓のリン脂質分子種組成の組換えの機序と腎臓のPC分子種の肝への依存性と肝からの独立性の機序についてさらに詳しく検討している。
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