ビタミンDは、代謝された活性化体がビタミンDレセプター(VDR)に結合し、ビタミンD応答配列(VDRE)を介してその作用を発現するため、VDRの構造と機能およびVDREとの結合様式を調べることはビタミンDの作用を考える上で重要である。本研究では、種々のVDR変異体を用いて、機能ドメインの同定と性質の解析を行い昨年までにDNA結合、リガンド結合、ダイマー形成ドメインを同定した。今年度はこれらドメインとDNAとの相互作用を解析するために新たなVDREを見いだすことを目的とし以下の実験を行った。 大腸菌で発現させたVDR、またはレチノイドXレセプター(RXR)との混合物をラットのゲノム遺伝子断片と結合させ、蛋白質-DNA結合物を選択的に回収した後増幅した。さらに回収、増幅をくりかえすことにより、VDRまたはVDR/RXRに特異的に結合する遺伝子断片を単離した。得られた断片の転写活性については、ルシフェラーゼ遺伝子をレポーターとしてトランスフェクション法により解析した。その結果、VDRにより選択的に単離された遺伝子断片VBF3は、ビタミンD依存的に転写活性を促進させることが明らかとなった。また、VDR/RXRにより選択的に単離された遺伝子断片VBF5は、逆に転写活性を抑制した。これらの遺伝子断片の全塩基配列を決定した結果、既知の配列との相同性はみられず、新規の遺伝子断片と考えられた。この中にはVDREと思われる配列が存在し、実際にVDRやVDR/RXRに結合することをゲルシフト法により確認した。またVBF5については、この領域のみで転写活性を抑制した。ゲノム遺伝子ライブラリーよりVBF5周辺のクローンを得、これを用いてノザンブロッティングを行ったところビタミンDに依存して発現が抑制される遺伝子の存在を明らかにした。
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