研究概要 |
好中球の殺菌にはスーパーオキシドなどの活性酸素が重要な働きをしている。細胞質のp47-phoxはこのような活性酸素の産生をつかさどるNADPHオキシダーゼの構成成分の一つである。p-47phoxは休止期には細胞質に存在するが活性化されると細胞膜へ移行し活性型のオキシダーゼ複合体を形成することが知られている。我々は従来よりプロテインキナーゼC(PKC)によるp-47phoxのリン酸化に伴うオキシダーゼ活性化促進とプロテインフォスファターゼによるp47-phoxの脱リン酸化に伴うオキシダーゼ活性化抑制を報告してきた。 今回我々はp-47phoxが更に過リン酸化を受けることにより逆に活性が阻害されることを発見した。無傷好中球をPKC活性化剤であるPMAあるいはプロテインフォスファターゼ阻害剤であるカリクリンAで前処理し、細胞膜と細胞質を調製し細胞膜に存在するオキシダーゼ活性と,細胞質に残存する無細胞系オキシダーゼ活性化能、細胞膜に移行したp-47phox量、並びに細胞全体でのp47-phoxのリン酸化程度を調べた。その結果PMA処理はp47-phoxをリン酸化すると同時に細胞質から細胞膜に移行させ、オキシダーゼを活性化した。一方カリクリンA処理ではPMA以上にp-47phoxをリン酸化(過リン酸化)するものの、細胞膜への移行は認められなかった。また、細胞質に残存するオキシダーゼ活性化能も非常に減少していることから、カリクリンAによるリン酸化はp47-phoxを膜に移行できない不活性型に導くものと思われた。細胞質に精製PKCを加え人工的にp47-phoxを過リン酸化状態にしたときにも同様にp47-phoxのオキシダーゼ活性化能は減少していた。 これらの結果はp47-phoxがリン酸化されればオキシダーゼが活性化されるという単純な図式ではなく,その程度やリン酸化部位により活性化せれる方向にも阻害される方向にも動くという複雑な制御を受けていることを示唆している。
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