Wistar系の雌性ラット(7週齢)肝臓からQuistorffらのDual-digitonin-pulse-perfusion法により、門脈枝周辺(periportal:PP)肝細胞の細胞質画分と中心静脈周辺(perivenous:PV)肝細胞の細胞質画分を得た。指標酵素であるalanine amino-transferaseとglutamine synthetase活性を測定したところ、それぞれ約4.5倍と約32.1倍の差があり(n=11)、両画分が十分に分離されていることが確認された。 2-Naphtholを基質とするフェノールスルホトランスフェラーゼ(フェノールST)の活性を両画分で比較すると、両活性ともにPV画分にやや高い局在性(約1.48倍)が観察された。ヒドロキシステロイドST活性は、フェノールSTとは逆にPP画分にやや高い局在性(約1.64倍)が観察された。ラット肝臓中にはST isoformが複数存在していることが知られている。両画分中のST isoformをクロマトフォーカシングで分離し比較した。フェノールSTのSTのisoformは、pH7.8にシャープなピークとして溶出されるものとpH7.2-6.2付近にブロードに溶出されるものの2種類が観察され、前者はPP画分のみに、後者はPV画分のみに存在した。ヒドロキシステロイドSTは、両画分とも広いpH範囲にわたってブロードに溶出され、両画分で溶出pHの値が異なっていた。 以上のように、個々のST isoformはそれぞれ異なった発現制御を受け、ラット肝臓小葉内においてそれぞれ独自の局在性を示すことが明らかになった。
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