研究概要 |
血管内皮細胞膜上に発現するトロンボモジュリン(TM)は,トロンビンによる血液凝固反応を抑制するタンパク質である。本研究はレチノイン酸(RA)によるTMの遺伝子転写活性化反応と腫瘍壊死因子(TNF-α)によるTMの遺伝子転写抑制反応をTM遺伝子プロモーター領域の塩基配列との関係から明らかにし,またその特異的配列と相互作用する核内タンパク質を解明することを目的にし,TM遺伝子上流の種々デレーションミュータント並びに核内RAレセプターの発現プラスミドを構築してCAT発現実験を行なった。 平成6年度の研究実績は以下にまとめられる。 1.TMの転写開始部位から約210塩基上流部分に基本転写活性に必須な塩基配列が存在する。 2.この領域はRAによるTM転写活性の促進にも関わる。 3.同じく転写開始部位から約220塩基上流部分に転写活性を負に制御する塩基配列が存在する。 4.TMのTATAボックスの少し上流のGCリッチな領域にTNF-αに依存して転写活性を抑制する塩基配列が存在する。 5.核内RAレセプターのRAR-α,RAR-β,RAR-γ,RXR-αの発現プラスミドを構築した。 6.RAによるTMの転写活性化に関わるこの領域は核内RAレセプターとは相互作用しない。 以上により、TM遺伝子上流の塩基配列には特定の核内タンパク質と相互作用して基本転写活性に影響する領域が存在すること,RAによるTMの転写調節はその5'上流遺伝子の比較的限られた領域を中心にして調節されてること,またRAによるTMの発現増加とTNF-αによるTMの発現低下は遺伝子レベルで互いに独立した転写への影響によるものであることを明らかにした。
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