研究概要 |
本年度は当初計画通り、1)GST Yrs-Yrsのクローニング、ならびに2)本クローンの発現系の構築が達成された。 1)GST Yrs-Yrsのクローニング:GST YrsサブユニットのN-末端アミノ酸配列から推定した99merの合成オリゴヌクレオチドをプローブとして雌SD系ラット肝λgt11 cDNAライブラリーのスクリーニングを行い、GST theta-1と命名したcDNAを単離した。GST theta-1は全長1,258bpからなり、開始メチオニンを含め244アミノ酸残基をコードする全翻訳領域を含んでいた。また、GST Yrs-YrsのN-末端アミノ酸配列ならびに、CNBrおよびトリプシンによる限定分解ペプチドのN-末端アミノ酸配列はGST theta-1 cDNAから推定されるアミノ酸配列と完全に一致し、全アミノ酸残基の54.7%に相当した。 2)Theta-1 cDNAの大腸菌による発現:Theta-1 cDNAの5′-および3′-末端にPCRを用いてEcoR1,Pst1認識部位を作成し、発現プラスミドpKK-theta-1を構築した。発現プラスミドpKK-theta-1により形質転換した大腸菌可溶性画分中にtheta-1Pは酵素機能を持つタンパク質として発現していること、さらに精製されたtheta-1Pはラット肝GST Yrs-Yrsと同じ性質を示すことが明らかとなった。 GST theta-1 cDNAのクローニングの成功によりthetaクラスGSTとして初めて、その全一次構造が明らかになった。また、既知のalpha,mu,およびpiクラスのGST分子種との全一次構造の同等性の比較より、thetaクラスのGSTは既知のGST分子種とは異なるgene familyを形成していることが明らかとなった。さらに、大腸菌によるcDNA発現によりGST Yrs-Yrsタンパク質を大量に調製することが可能になった。
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