本年度は、著者らがラット肝臓より見出し命名したGST Yrs-Yrsの生体内における機能解明の一環として、ラット以外の汎用実験動物(マウス、ハムスター、モルモット)において、これまで全くその存在が不明である本酵素の臓器分布を、本酵素の特異基質である活性硫酸エステルのGSH解毒抱合活性ならびに本酵素抗体を用いたWestern blot分析により検討した。その結果を以下に要約する。 1.活性硫酸エステルに対するGSH解毒抱合活性の臓器分布 (1)いずれの動物種に於いても肝臓>>腎臓>副腎>肺、脳、精巣、卵巣>心臓の順であった。また、皮膚、小腸、骨格筋および脾臓では同活性は認められなかった。 (2)ラットおよびマウス肝の同活性はモルモットおよびハムスターの10倍であった。 (3)いずれの動物種に於いても著しい性差は認められなかった。 2.GST Yrs-Yrsの臓器分布 (1)ラット、マウスおよびモルモットは、上記酵素活性の臓器分布とほぼ一致したが、ハムスターでは必ずしも一致しなかった。 (2)モルモット肝はラットおよびマウス肝に比べ活性硫酸エステルに対するGSH抱合活性が著しく低値であったが、抗体による染色強度はそれらと同程度であった。 平成7年度計画調書で記載した各種実験動物(ラット、マウス、ハムスター、およびモルモット)の雌雄各12臓器中の活性硫酸エステルに対するGSH抱合活性ならびにGST Yrs-Yrs抗体を用いたWestem blot法による同酵素の臓器分布の解明は予定通り達成された。 本酵素はラットのみならず、マウス、ハムスター、およびモルモットにもその存在が示唆された。したがって、今後これらの動物種における同酵素の役割も併せて取り扱うことが本酵素の生体内における真の役割の解明につながると思われる。
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