研究概要 |
本年度は、前年度達成されなかったNorthem blot法によるGST Yrs-Yrs mRNA量の臓器分布(既にWestern blot法を用い臓器分布の検討は終了)を完成する予定であった。しかしながらごく最近、本酵素と同一クラス(theta)のGST5-5が、発癌剤であるdichloromethaneの発癌活性本態の生成に関与することが示唆され、そのためthetaクラスGSTの代謝活性化酵素としての作用が指摘された。そこで本年度計画の一部を以下の様に変更した。 1.GST5-5及びGST Yrs-Yrsの同時精製法の確立 SD雄性ラット肝細胞質画分から5段階のカラムクロマトグラフィーにより、両theta酵素をSDS-PAGE、逆相分配HPLC的にそれぞれ均一な酵素タンパク質として単離・精製することに成功した。なお、本研究によりGST5-5が初めて安定な純タンパク質として入手可能となり、このことは、GST Yrs-YrsとGST5-5がSDS-PAGEならびに逆相分配HPLC的に異なる易動度を示すタンパク質であることを示す結果となった。また、ラット肝ではGST Yrs-YrsがGST5-5よりも約7倍その肝中存在量が多いことが明らかとなった。 2.GST5-5とGST Yrs-Yrsの酵素化学的性質 両酵素の基質特異性は、他クラスのGSTの汎用基質である1-chloro-2,4-dinitrobenzene(CDNB)に対して殆ど活性が無く、過酸化物を還元するGSH Px活性が他のクラスの分子種に比べ非常に高いというthetaクラスに特徴的な共通部分を除くと大きく異なり、一方のGSTにとっての特異基質(5-sulfoxymethylchrysene(Yrs-Yrs);1,2-epoxy-3-(4′-nitrophenoxy)propaneおよびdichloromethane(5-5))は他方の基質とはなり得なかった。 3.GST55とGST Yrs-Yrsの免疫化学的性質 上記1.で得られたGST5-5を家兎に免疫し抗-GST5抗体を調製した。その結果、抗-GST5抗体はラットalpha,mu,およびpiクラスのGST分子種のみならず、同一クラス内のGST Yrs-Yrsとも全く免疫交差性を示さなかった。また、既に調製されている抗-GST Yrs抗体もGST5-5とは免疫交差性を示さなかった。
|