研究概要 |
ヒト胎盤シアリダーゼが酸性条件下37℃でインキュベーションを行うと著しい活性化を受ける。著者らは先にこの活性化現象がアミノペプチダーゼA様のプロテアーゼの関与によって行われることを阻害剤を用いた実験から明らかにした(J.Biochem.,114,901(1993))。今回、この活性化に関与するプロテアーゼの性質と活性化機序の解明を行う目的で、プロテアーゼの分離、精製を試みた。 ヒト胎盤を用いて、シアリダーゼの精製法に準じて分離操作を行い、Con A吸着画分を得た。この標品はシアリダーゼの著しい活性化現象を示すと共に、アミノペプチダーゼAの阻害剤であるアマスタチンにより特異的に阻害されることを確認した。またこの標品はグルタミン酸アミノペプチダーゼ及びロイシンアミノペプチダーゼ活性を持つことが分かった。Con A吸着画分を用い、両アミノペプチダーゼ活性を指標にプロテアーゼの精製を試みたところ、セファデックスG-200ゲルろ過による分離で二つのピークが観察された。二つの画分はいずれも両アミノペプチダーゼ活性を示すものの、その比は大きく異なり、少なくとも二種類の異なる性質を持つアミノペプチダーゼの存在を示唆する結果を得た。 また、これら二つのアミノペプチダーゼ活性の至適pHはいずれも7付近にあり、これはシアリダーゼの活性化における至適pH5.0とは異なるものであった。さらに、分離されたアミノペプチダーゼのプロテアーゼ阻害剤による影響を調べたところ、これまで報告されたヒト胎盤アミノペプチダーゼAのそれとは異なるものであり、現在更なる精製及び酵素学的な諸性質の検討を行っている。
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