研究概要 |
中枢神経系に存在する微量成分ガングリオシドの中からアルカリ不安な成分が存在していることを見いだし、それらの化学構造を、9-O-Ac-GD3,9-O-Ac-LD1,9-O-Ac-GD2,9-O-Ac-GD1bであると決定することに成功した。アルカリ不安定なシアル酸を認識する単クローン抗体、493D4,P-path,D1.1それぞれの反応特異性を決定すると共に、これらの抗体を使い、正常脳組織での抗原分布様式を明らかにした。その結果、小脳においてアセチル化ガングリオシドは分子層に特異的に発現しており、このことからこのガングリオシドが神経のシナプス形成や可塑性に関与していることが期待された。また、493D4抗体は、ガングリオシドのみならず、糖タンパクとも反応した。神経組織においては、シナプトフィシンがアルカリ不安定な糖鎖を発現していることが明らかにされた。更に、これらの抗体を使った発現クローニングによりアセチル基の生合成の関わる因子をコードしているcDNAをクローニングすることに成功した。現在、遺伝子構造を解析しているところである。 糖脂質の一般的機能を明らかにする目的で、糖脂質の完全欠損したメラノーマ変異株を確立することに成功した。変異株を使うことにより、スフィンゴ糖脂質は細胞接着に必須の成分であることを見いだした。このことから、糖脂質やスフィンゴミエリンを含めたスフィンゴ脂質は、細胞表面にて機能的ドメイン形成に寄与していることが予想された。現在、神経細胞膜でのスフィンゴ脂質ドメインの存在の有無について解析を開始している。
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