我々は、動物細胞のグルコース輸送が細胞膜に存在する約55kDの糖タンパク質であるグルコース輸送タンパク質(GLUT1)の発現量ならびに、その糖鎖修飾を介して調節されていることをすでに明らかにしている。本研究ではヒトがん細胞におけるGLUT1発現変化について検討した。 ヒト由来がん細胞株のGLUT1の発現を抗GLUT1抗体を用いたイムノブロット法で調べたところ、子宮がん細胞(HeLa)および肺がん細胞(A549)において、糖鎖異常による高分子量化が認められた。この糖鎖変化に伴い、GLUT1のグルコース親和性も顕著に増加していた。また融合細胞株を用いた解析より、HeLa細胞におけるGLUT1の糖鎖修飾と機能変化は、正常細胞由来の癌抑制遺伝子機能の欠失に依存した造腫瘍性と密接な関連を示した。一方、各種レクチンの全膜タンパク質への結合性には大きな変化が認められず、糖鎖修飾はGLUT1に高い特異性を示した。更に、糖鎖分解酵素や各種レクチン、および糖鎖合成阻害剤を用いた解析の結果、がん化に伴うGLUT1の糖鎖修飾は、主としてN-結合型糖鎖の鎖長の進展によることが示唆された。GLUT1タンパク質の糖鎖修飾構造と調節機構、ならびにヒトがん病態との関連について更に検討中である。
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