研究概要 |
1. 2-アザビシクロ[2. 2. 1]ヘプト-5-エンの不斉合成 抗ウイルス活性を有する光学活性炭素環ヌクレオシドの原料となる2-アザビシクロ[2. 2. 1]ヘプト-5-エン-3-オン(ビシクロアミド)の不斉合成を検討した.すなわち,今や国内で生産されるようになったbenzenesulfonyl cyanideとcyclopentadieneとの反応を各種キラルルイス酸存在下反応を行った.その結果,キラルジオールとエチルアルミニウムジクロリドから調製したキラルルイス酸が最も良好な選択性(ee)でビシクロアミドを生成した.しかし,その選択性もたかだかee25.6%が最高であり,今後選択性を高めるためには反応条件の検討,新たなるキラルルイス酸のデザインが今後の課題である. 2.アミノ酸残基を有する新規炭素環ヌクレオシドの合成 申請者らは新しい反応活性種であるニトロソケテンと各種ケトンとの反応より環状ニトロンを得る手法を見出した.ここで得られるニトロンは各種アルケンと1,3-双極子環化付加し,イソキサゾリジン誘導体を高立体選択的に生成した.さらに付加体をアルカリ加水分解,接触環元し,γ-ヒドロキシ-α-アミノ酸を立体選択的に得た.この反応においてアルケンとしてボルナジエンやビシクロアミドを用いて1,3-双極子環化付加反応を行うと,エキソ付加体が2種の位置異性体として得られた.これら付加体は2位また3位にα-アミノ酸残基をもつ炭素環ヌクレオシドの合成中間体に相当し,今後その展開が期待される. 3.炭素環ホモヌクレオシドの合成 ホモヌクレオシドはヌクレオシド糖部と塩基部がメチレンで結ばれたヌクレオシドの総称であるが,これまでその炭素環アナローグは合成されていない.申請者らは新しいジエノフィルとしてdimethyl trifluoroacetylaminomethylenemalonateを合成し,cyclopentadieneとディールスアルダー反応させビシクロ体を高収率で得た.この付加体より水素化ホウ素ナトリウムによる環元的C-C結合開裂反応を行い,炭素環ホモヌクレオシドの前駆体の合成に成功した.
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