本研究により得られた知見を述べる。 1)アデノシンの6位置換体の場合では、アデノシンの場合に比較し反応性が低下した。また、プリン環7位窒素原子がメチン基に置き変わった、7-デアザ体ではイノシン型、アデノシン型ともに本条件下では反応が進行しなかった。この事実は本還元反応が、DIBAL-Hのプリン環7位窒素原子への配位により惹起されることを示唆するものである。このことより、O^6-置換体のDIBAL-H還元に於いてはDIBAL-Hと酸素原子との親和性が高いためにDIBAL-Hが先ず6位酸素原子に配位し、更に7位窒素原子に配位したために好効率に進行したと考えている。 2)一方本反応をプリミジン系アシクロヌクレオシドの合成に適用したが反応が複雑に進行し、期待するするアシクロピリミジンンヌクレオシドを得ることはできなかった。 3)著者は、DIBAL-Hによるピリンヌクレオシドの糖部開環反応を用いて、強力なSAdenosyl-L-homocysteine(SAH)hydrolase阻害剤として知られるNeplanocin Aの糖部開環体の合成に成功した。その他、SAH hydrolase阻害が期待されるアシクロ系アデノシン誘導体も合成した。本反応を用いることにより様々なアシクロプリンヌクレオシド誘導体の合成が可能であることを示すことができた。 以上の如く本研究に於いて、著者は、DIBAL-Hによるヌクレオシド類の糖部開環反応を種々検討した。その結果、本反応はプリン系ヌクレオシド誘導体に有効であることを明らかにした。また、詳細な反応性の検討によりプリン塩基部の置換基効果と配位の重要性を明らかにした。更に、本還元反応を利用した種々の抗ウイルス活性の期待されるプリン系アシクロヌクレオシド類への誘導に成功した。
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