現在、細菌、ウイルスのエピトープのアミノ酸配列をもとにして合成されたペプチドを用いて、特異的抗エピトープ抗体が作成されているが、満足な結果は得られていない。細菌内毒素のリピドA、菌体成分のリポペプチドならびにMDPは抗体産生を増強させるアジュバント物質であり、構造も明らかである。申請者は、これら合成免疫アジュバント物質を細菌、ウイルス等のエピトープを構成する5-25個のアミノ酸と結合したエピトープペプチド結合合成免疫アジュバントを単独で、動物へ投与免疫し、エピトープ特異抗体の誘導を酵素抗体法で調べた。 1.リンパ球幼若化活性、TNF誘導活性を指標として、アジュバントに用いるリポグリセロールの構造活性相関を調べた。グリセロール、プロパン、エタン、ホモグリセロール型等のうち、グリセロール型が最も強いリンパ球幼若化活性、TNF誘導能を示した。天然のリポグリセロールは3個のパルミチン酸を含むが、2個でも十分活性を示し、結合脂肪酸の炭素数は14〜16が最適であった。また、リポグリセロール部分に結合するアミノ酸は4-5個で活性を示した。リポグリセロール結合品と比べ、MDP結合品は活性が低く、それ以上の検討は中止した。 2.HIVのgp120部分のエピトープの6個のアミノ酸単位を3個繰り返したペプチドを脂肪酸1個、または2個のリポグリセロールに結合させた標品をBALB/cマウスに投与し、その抗体価を経時的にELISAで調べた。その結果、リポグリセロール部、あるいはペプチドのみ投与の血清と比べ、リポグリセロール結合ペプチド投与血清が高い抗体価を示し、これらの化合物は幼若化活性、NO産生能も高いことが見出された。 3.リピドA単頭類縁体にセリン、アスパラギンを結合した化合物は幼若化活性、TNF誘導能を示すが、致死毒性は低いことから、合成リピドA結合ペプチド標品についても検討する価値のあることが示唆された。
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