研究概要 |
株化された発生段階の異なるヒト白血病細胞(急性前骨髄球性白血病HL-60、骨髄芽球様U937,慢性骨髄性赤芽球様K562)を用いて、アポトーシス誘導能の強い薬物をスクリーニングした結果、以前報告したブファリンの他にイソプレノイド化合物であるゲラニルゲラニオールがアポトーシス誘導剤として適していることを見いだした。50μMのゲラニルゲラニオールは上記の白血病細胞に対し3時間でDNAフラグメンテーションを誘導した。また癌遺伝子に対しては、c-mycとbc12の発現を経時的に減少させた。タンパク質に対しては、ゲラニルゲラニオール処理により55kDaのタンパク質量が経時的に減少した。このタンパク質をSDS-PAGEおよび逆相のHPLCにより精製し、部分アミノ酸配列を気相シークエンサーにより決定したところ、カルレチキュリンの部分アミノ酸配列と完全に一致した。したがって55kDaのタンパクはカルレチキュリンと同定された。次に上記の白血病細胞に、種々の組み合わせの分化・アポトーシス誘導剤どうし、あるいは分化・アポトーシス誘導剤と癌化学療法剤を併用して作用させた結果、ブファリン、エトポシド、レチノイン酸を併用したときが最も細胞増殖阻害能が大きかった。また処理したほとんどの細胞の核が断片化し、DNAフラグメンテーションが認められたので、これらの細胞にアポトーシスが誘導されたことが解った。U937細胞を用い、MAPキナーゼを測定した結果、上記三種の誘導剤の併用処理によりMAPキナーゼの異常で継続的な活性上昇が認められた。したがって、U937細胞においては、MAPキナーゼの異常な活性昂進がアポトーシス誘導のシグナルになっていることが示唆された。
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