研究概要 |
ヒト白血病細胞に対し分化・アポトーシス誘導能の強い薬物を見いだすこと、およびin vitroおよびin vivoで分化・アポトーシス誘導剤どうし、または分化・アポトーシス誘導剤と癌化学療法剤を併用して作用させ分化・アポトーシス誘導に相乗効果のある薬物の組み合わせを明らかにすることを目的とした。 株化された発生段階の異なるヒト白血病細胞(急性前骨髄球性白血病HL-60、骨髄芽球様U937,慢性骨髄性赤芽球様K562)を用いて、アポトーシス誘導能の強い薬物をスクリーニングした結果、以前報告したブファリンの他にイソプレノイド化合物であるゲラニルゲラニオールがアポトーシス誘導剤として適していることを見いだした。次に、分化・アポトーシス誘導剤と癌化学療法剤を併用して作用させた結果、ブファリン、エトポシド、レチノイン酸を併用したときが最も細胞増殖阻害能が大きかった。また処理したほとんどの細胞の核が断片化し、DNAフラグメンテーションが認められたので、これらの細胞にアポトーシスが誘導されたことが解った。U937細胞を用い、MAPキナーゼを測定した結果、上記三種の誘導剤の併用処理によりMAPキナーゼの異常で継続的な活性上昇が認められた。したがって、U937細胞においては、MAPキナーゼの異常な活性昂進がアポトーシス誘導のシグナルになっていることが示唆された。 in vivoでは、HL-60をSCIDマウスの静脈に注入移植した白血病マウスに対し、ブファリン、エトポシド、レチノイン酸を併用し投与すると有為差のある延命効果が認められた。今後スケールを拡大した動物実験が必要である。
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