研究概要 |
抗癌剤多剤耐性が癌化学療法における大きな障害であることが明らかとされている.抗癌剤多剤耐性解除作用を有する化合物の探索を目的として、直鎖の(1)ジアミン、(2)ジカルボキサミド、(3)ジスルホンアミドを合成し、多剤耐性P388マウス白血病細胞に対する構造活性相関をin vitroで検討した。一般に(3)>(1)>(2)の順に作用が強い傾向を認めた。さらに、N-メチル誘導体の作用が強いとの知見を得た。これらの知見を基に、環状化合物を合成し、in vivoにおける1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロ-2,5-ビス(p-トルエンスルホニル)ベンゾ[2,5]ジアゾシンの強い抗癌剤多剤耐性解除作用を見いだした。さらに、1,3,5-トリアザシクロヘプタンを中心とした一連のアルカンジアミン誘導体を合成し、多剤耐性解除作用をin vitroおよびin vivoで検討した。これらの化合物の多くは耐性細胞内へのビンブラスチンの蓄積を増加させたが、感受性細胞では影響は少なかった。それらの中で特に興味深い化合物群は、1,5-ジベンジル-1,3,5-トリアザシクロヘプタンであった。これらの化合物の耐性細胞でのビンブラスチン蓄積増加作用は2,4-ジチオキソ>2-オキソ-4-チオキソ=4-(メチルチオ)-2-オキソ>2,4-ジオキソの順であった。この作用はベンジル基をクロロベンジルに変換するとさらに増強した。最も強い作用は、1,5-ビス(4-クロロベンジル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-4-メチルチオ-2H-1,3,5-トリアゼピン-2-オンで見られた。この化合物を細胞培養系でビンブラスチン、アドリアマイシンおよびマイトマイシンCの作用を増強した。さらに、耐性細胞を移植したマウスにビンブラスチンと併用して経口投与すると用量に依存した生存日数の延長傾向を示した。
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