研究概要 |
本研究の目的にそって、FISH法による詳細な解析のために診察・採血した患者は6名(6家系)で、両親を含めて12名の染色体標本を作製した。そのうち6名(発端者4名)にEB virusによるcell lineの樹立を試み、4名樹立した。患者への結果の報告は主治医を通して行なう以外に、研究代表者が臨床遺伝学的立場から説明と遺伝相談を3家系に行なった。 発端者の5名は染色体構造異常である。マーカー染色体をモザイクに有する症例は、Y由来のプロープによるFISHおよびpaintingで、マーカー染色体がi(Yp)という疑いは否定した。報告の多い15番染色体やその他のプローブによるFISHでマーカーにハイブリダイズせず、microdissectionで由来を検索している。8p+の染色体異常は8番染色体のペインティングで過剰部位が染色されなかったため、8番染色体短腕の重複によるdup(8p)は否定し、過剰部位の検索はmicrodissectionで行なっている。以上の2例は従来の方法による疑診をFISHで否定した。XXmaleの男性はY由来のプローブによるFISH及びpaintingでシグナルが認められず、DNA分析でSRY(sex-determining region of Y)が存在した。FISHでSRYの局在(染色体転座部位)を知るためにinsertの大きいSRY probeを入手し、FIAHを行なっている。1番染色体長腕介在型欠失の症例は、切断点の詳細な解析のために、遺伝子バンクよりcosmid cloneの供与を受け、FISHを行なうと同時に欠失部位近傍に存在するfactorの測定を行ない、そのfactorの染色体マッピングを行なっている。残りの染色体異常の1例は父親が転座保因者であったため、すぐに遺伝相談を行なった。X染色体優性遺伝のIncontinentia pigmentiの症例は現在Xp11.2とXq28の2ヵ所に座位が想定されているが、DXZ1,Xq28のcosmid cloneによるFISHで欠失は検出しなかった。
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