ヒト白血病細胞株HL-60とMOLT-4の細胞増殖、及び正常ヒト末梢血リンパ球のマイトゲン応答性増殖に対する、29種のフラボノイドと11種のリグナンの効果を検討した。このうち9種のフラボノイドと4種のリグナンが、強いHL-60増殖抑制効果を示した(IC50<1000g/ml)。中でも、タンゲレチン、ゲニステイン、ホ-ノキオール、マキリン、アークチゲニン、及びマタイレジノールは、既存の抗癌剤とほぼ同程度の抗白血病効果を示した(IC50<100ng/ml)。しかし、これらの化合物のHL-60細胞に対する細胞毒性は低く(LC50<2900ng/ml)、それ以外の機構でHL-60細胞増殖を抑制するものと思われた。一方、マキリンとアークチゲニンを除き、これらの化合物のMOLT-4細胞増殖抑制効果は弱かった。同様にヒトリンパ球増殖に対する効果も弱く、上記化合物がHL-60細胞に対して選択的に抑制効果を示すことが示唆された。 上記化合物のHL-60細胞に対するアポトーシス誘導作用を検討したところ、タンゲレチンとエンテロラクトンがHL-60細胞にアポトーシス小体の形成を導く効果のあることが分かった。このうち、タンゲレチンのアポトーシス誘導作用を更に詳細に検討した。タンゲレチン処理したHL-60細胞のDNAは断片化し、また細胞周期に変化の現われていることが、アガロースゲル電気泳動及びフローサイトメトリーによって確認された。タンゲレチンによるHL-60細胞のアポトーシスは、Znイオンやシクロヘキシミドで阻害された。 以上平成6年度は、フラボノイドとリグナンの中から、免疫抑制効果の少ない、アポトーシス誘導性抗白血病化合物として、タンゲレチンの有用性を示した。平成7年度以降は、上記の測定系を用いて更に多くの化合物のスクリーニングを実施する予定である。
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