さきに考案したガラスフィルター法、すなわち、ガラスフィルター上に形成させた脂質膜の間を急速に水相が通過する際にリポソームが生成する現象を利用する方法を用いて、ペプチド性薬物であるカルシトニンを内包する二重化処理リポソームを調製し、経口投与製剤としての可能性を動物を用いて検討した。 まず、サケカルシトニン0.1〜0.5mgをpH3.0クエン酸緩衝液に溶解し、26μMの水素添加レシチン溶液に加え乳化したのちガラスフィルターに含浸させ、窒素気流を用いて乾燥後クエン酸緩衝液を通過させて、直径0.8〜2.0μMのリポソームを調製した。つぎにこのリポソーム懸濁液を、孔径のより大きいフィルター上に形成させたカルシトニンを含まない脂質膜の間に通し、二重リポソームを含む直径5〜10μMのリポソーム混合物を得ることができた。カルシトニン内包率は添加量に関わらず平均5%であり、調製時の分解は認められなかった。 カルシトニンを内包する二重化処理リポソーム懸濁液を、カルシトニンとして10μg/kg、Wistar系雄性ラットにゾンデを用いて胃内投与したところ、血中カルシウム濃度がカルシトニン溶液投与時と比較して著明に低下しかつ持続するという結果が得られた。これがカルシトニンの消化管からの吸収によるものであることを確認するため、さらに日本白色ウサギに10μg/kgを経口投与し、現在、血中カルシトニン濃度を測定中である。
|