新しく得られた抗CD36モノクローナル抗体(MoAb)である131.4、131.5、131.7はコラーゲン刺激による血小板凝集および細胞質遊離Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]i)の増加を濃度依存性に抑制するとともに、Mg^<2+>非依存性のコラーゲン粘着を特異的に抑制した。以上からCD36は血小板のコラーゲンレセプターの一つである可能性が示唆された。 健常人130例、各種疾患患者111例について、血小板表面に発現されているCD36について検討した。健常人130例中血小板CD36は123例(94.6%)に発現されており、陰性は7例(5.4%)であった。この陰性の頻度は、わが国における従来の報告の3〜7%と類似した結果であった。CD36陽性者についてCD36発現のピーク値をみると、血小板1個あたりのCD36発現量の多いhigh peak群とlow peak群の2群に分かれる傾向が認められた。一方各種疾患患者での血小板のCD36の発現は多様であり、血小板のCD36とGPIbをフローサイトメトリー2カラー法で測定しそのピーク値の比をとると、疾患群ではその比が大、すなわちCD36発現が亢進している群と、比が小、すなわちCD36発現の低下している群とに分かれた。CD36ピーク値とMPVとの間には相関関係はなく、トロンビンなどで刺激するとCD36発現量は増大することから、発現の亢進は容積よりも血小板活性化が関係していると考えられた。またCD36発現の低下には一部抗血小板抗体の関与も推定された。 低比重リポ蛋白(LDL)自体(n-LDL)には血小板を活性化したり、活性化を促進したりする作用はみられなかったが、LDLを硫酸銅によって酸化した酸化LDL(ox-LDL)は、高濃度で血小板を凝集させ、血小板表面へのCD62P (GMP-140)およびCD63の発現を惹起させるとともに、低濃度ではトロンビン刺激による血小板凝集を惹起させた。また[Ca^<2+>]iを増加させ、トロンビンによる[Ca^<2+>]iの増加を亢進させた。抗CD36MoAbは、ox-LDLの血小板結合を50%抑制した。またこのMoAbは、ox-LDLによる[Ca^<2+>]i増加作用、[Ca^<2+>]i増加亢進作用、トロンビン凝集促進作用、および血小板表面へのCD62P、CD63発現惹起作用を約50%抑制した。以上から、血小板CD36抗原はox-LDLの血小板結合のレセプターの一つであると推測した。
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