急性骨髄性白血病患者の予後を推測できる臨床検査法の確立を目的として、白血病細胞の増殖能と患者予後との相関の研究を行った。 平成6年度の研究により、白血病細胞の増殖は、白血病性幹細胞の増殖、ことに自己再生能の機構を解明し、その中の一部の白血病性幹細胞によって維持されており、白血病性幹細胞の自己再生能の強弱が患者の予後と相関する事実を見出した。そこで、平成7年度では、白血病患者の予後を推測しうるか否かの検討を続けることにした。 白血病性幹細胞の自己再生能は種々のサイトカインによって刺激されることが分かった。中でも、G-CSF、GM-CSF、IL-3、SCFなどが白血病性幹細胞の増殖を刺激することが確認された。これに対し、TNF、IFN、TGFβなどのサイトカインは白血病性幹細胞の自己再生能を抑制した。aFGF、bFGFには、白血病性幹細胞の増殖に対して有意な作用が見られなかった。 白血病幹細胞に対するCSFの作用を詳細にするために、G-CSF、GM-CSF、IL-3のシグナル伝達系を検討した。これらのCSF種々の段階においてチロシンリン酸化を起こすことが確認できた。それぞれの蛋白の同定が今後重要な研究課題と考えられる。 急性骨髄性白血病患者の予後は白血病性幹細胞の増殖能と関係しており、このことから治療の標的にもなると考えられた。
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