研究概要 |
1.本態性高血圧症患者の血圧の食塩感受性に遺伝的因子が関与することが提唱されている。今回、これを発展させ、具体的な遺伝子マーカーの検出を行うため、アンジオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子やハプトグロビン蛋白などの遺伝的多型性を示す因子と食塩感受性が関与するか否かを検討した。 2.66人の軽、中等症の本態性高血圧症患者を入院とし、血圧安定後、減塩食(1日3g)および増塩食(1日20g)を一週間ずつ摂取させた。減塩期から増塩期にかけての平均血圧上昇度が10%以上を食塩感受性(SS)、それ未満を食塩抵抗性(SR)とした。ACE遺伝子は白血球を用いイントロン16に存在する挿入/欠失(I/D)をPCRにより増幅して検出した。ハプトグロビン蛋白多型性は電気泳動法により1-1,2-1,2-2の3群に分類した。 3.SSは35例、SRは31例であり、両群の年齢や性に差はなかった。ACE遺伝子多型性の分布はSS(II:22,ID:10,DD:3)でSR(II:10,ID:14,DD:7)に比し,IIが有意に多かった。I-alleleの出現頻度もSS(0.77)でSR(0.55)に比し有意に高かった。3群間の血漿レニン活性に差はなかった。ハプトグロビン蛋白表現型の分布はSS(1-1:3,2-1:14,2-2:14)とSR(1-1:3,2-1:11,2-2:11)との間には差を認めなかった。 4.本態性高血圧症患者の食塩感受性にハプトグロビン蛋白表現型は関連しなかったが、ACE遺伝子多型性は有意の関連を示した。ACE遺伝子のI alleleは日本人の食塩感受性の予測因子として、性、年齢、血漿レニン活性とは独立した有用な遺伝子マーカーであることが示された。
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