研究概要 |
キャピラリー電気泳動法は微量試料を前処理なしで迅速に検体の分離が出来るので,検査医学領域での臨床診断えの応用が期待されている。しかし,従来の方法では未知の成分を多く含む血液成分ではよい分離成果が報告されていない。方法として最初に未処理の20μm(直径)x20cm(有効長)フューズトシリカキャピラリーカラムを用いて,検出波長200nm,23℃で分離を試みた。セルローズアセテート膜による従来の電気泳動と同様なパターンが得られ,200nmの測定の方が,214nmより約3倍の感度が高かった。担体であるキャピラリーカラム壁面のシラノール基に血清蛋白の吸着が生じる事を発見し,試料蛋白の吸着を高濃度のイオンペァー試薬を含んだ緩衝液で,試料よりも高い等電点にして試料(蛋白)の荷電を変化させ,かつキャピラリーの表面をポリアミンでコーティングして,低pHでシラノールの解離を抑制すると分離が良好な事が分かった。この様に調整した方法でのキャピラリー電気泳動では,血清蛋白を20mMリン酸-75mMNaCl緩衝液(pH7.0)で11倍に希釈して,泳動緩衝液に150mMホウ酸・水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)で390秒間泳動すると10ピークに分離され,セルローズアセテート膜電気泳動法よりも,繊細に分離され,lgG,C3,α-MG,Tf,Hp,α-AT,Alb,PreAlbなどの各蛋白成分が抗血清を用いたアフィニティーカラムクロマトグラフィーで証明された。各種疾患での泳動パターンは臨床上重要で,今後の日常検査に応用できる知見が得られた。しかし,まだキャピラリーカラムえの血清蛋白吸着は100%阻止できないので,水酸化ナトリウム洗浄によりキャリーオーバを防がざるをえない。検体処理能力も現在用いているセルローズアセテート膜による電気泳動法に比べ劣るので,更に検討が必要である。
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