水酸化カリウム(KOH)、塩化カリウム(KCl)、ポリブレン(polybrene)の混合試薬による、遠心沈殿操作の必要のない血液検体前処理法を開発し、(1→3)-β-D-グルカンの自動測定を可能とした。KOHは血漿ないし血清中に含まれるリムルステストの干渉因子を除去するとともに、自然の状態では三重鎖らせん構造をとっている(1→3)-β-D-グルカンを一本鎖の形に解離し、カブトガニのG因子に対する活性を強め、検出感度を高める作用を果たしている。KClは解離した(1→3)-β-D-グルカンを一本鎖の状態のまま維持安定させるのに役立っている。またポリブレンによって、インキュベーションの間に非特異的な濁りが検体中に生ずるのを防ぐことができた。さらにカイネティック・モードを採用することにより、検体を希釈することなく、1〜500pg/mlの幅広い範囲の測定が可能となった。血中(1→3)-β-D-グルカン測定法の侵襲性深在性真菌症に対する感度・特異性は、20pg/mlをカットオフ値としてそれぞれ90%、100%であった。 最近、カブトガニの血液から、(1→3)-β-D-グルカンに特異的に結合し、(1→3)-β-D-グルカンのG因子に対する活性を阻害する蛋白性因子が単離された。この因子と(1→3)-β-D-グルカンに対するモノクローナル抗体を用いてELISAによる(1→3)-β-D-グルカンの測定を試みた。検出感度は低いものの、深在性真菌症例の臨床検体について、合成気質法との間に相関が認められた。これによって、深在性真菌症において血中に(1→3)-β-D-グルカンが増加していることを、さらに別の面からの確認した。
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