研究概要 |
1985年,アメリカNHのSshlomらは,大腸癌およびその肝ないし脾臓転移単の抽出液を免疫原として15個のマウスモノクロナール抗体(COL-1〜COL-15)を作製した(Cancer.,Res.45:5769,1985).その後、黒木もこの一連の抗体の解析に参加し,うち14個について癌胎児性抗原(CEA)との反応性など詳細なエピトープ・マッピングを報告した((Int.J.Cancer,44:208,1989).Scholomらは,最近これらの中の1つであるCOL-4が,調べたほとんどの樹立胃癌細胞には存在するが,他の組織由来の樹立癌細胞には存在しない分子量約110KDaの糖蛋白質抗原(Mr 110,000抗原)と交差反応し,この抗原が胃癌細胞の細胞膜に存在することを報告した(Cancer Res.,51:5694,1991).また,このMr 110,000抗原は,組織染色パターンや分子量の点から既存のCEA,EMA,CA19-9,CSLEXIなどとは異なる新しい腫瘍関連抗原であり,胃癌を識別する新しい腫瘍マーカーとなる可能性がある。 これまで目的とする胃癌抗原すなわちMr110,000抗原は,KATOIIIを含む調べた7種の樹立胃癌細胞すべてに存在することをすでに確認しており,まずこの抗原を精製してその化学的性状を解析した。即ち培養胃癌細胞KATOIIIから細胞膜分画を調製して可溶化し,目的抗原をCOL-4抗体アフィニティクロマトおよびゲルろ過で精製した。精製された抗原をアミノ酸特異的酵素で切断し,プロテイン・シークエンサーでアミノ酸配列を一部決定した。次にアミノ酸配列を基にcDNAをクローニングしその配列を決定した。培養胃癌細胞KATOIIIよりpoly(A)^+RNAを抽出し,Uni-ZAPベクターを用いてcDNAライブラリーをし,上記1で得られたアミノ酸配列に相当するオリゴヌクレオチドを合成し,これをDNAプローブとしてスクリーニングを行い,陽性クローンの塩基配列をジデオキシ法で決定した。この時点で新しい抗原であることが確認された。
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