研究概要 |
β-galactosidaseは、糖鎖のβ-1,4,galactoseを切断する酵素であり、この欠損症には、GM1ガングリオシドーシス及び、モルキオB病がある。これらの疾病は同一酵素でありながらその点変異により症状が全く異る。これはその点変異により基質の認識部位が変化し、基質の切れ残りである蓄積物が異るためと考えられている。しかしながらこの証明はなされておらず、これらの点変異をバキュロウィルスの系で蛋白を発現させ、合成基質(4MU galactopyranoside)及び天然基質(GM1ガングリオシド、ケタラン硫酸、アスパラギン糖鎖由来多糖)との特性を検討することを試みた。しかしながらGM1ガングリオシドーシスより同定された点変異(A、B、I)では、残念ながら分泌蛋白は得られず、モルキオB病から同定された点変異(F)のみ、発現蛋白の分泌がみられた。この“F"変異蛋白を精製し、今年度は、4MU galactopyranosideに対するKm値を正常のβ-ガラクトシダーゼと比較検討し、次の知見が得られた。1)正常酵素は、前駆体蛋白(84kD)及び成熟体蛋白(64kD)の両方が発現されたが、“F"変異酵素は前駆体蛋白(84kD)のみが発現された。2)“F"変異蛋白は、基質アナログであるp-aminopheny1 β-D-thio galactopyranosidseに対して、正常の5倍の結合能の低下が認められた。3)正常酵素の前駆体蛋白(84kD)と成熟体蛋白(64kD)の合成基質に対するKm値は、それぞれ0.5mM、0.25mMであり、成熟体蛋白の方が親和性が高い。4)“F"変異蛋白のKm値は0.5mMで、これは正常酵素の前駆体蛋白と同じであった。5)正常酵素はまた、界面活性剤のchapsによって活性が上昇するが、前駆体蛋白のKm値を0.5mMから0.25mMへと変化させる。6)正常酵素の前駆体蛋白をトリプシン処理し、成熟体蛋白とし、そのKm値を測定すると同様に0.5mMから0.25mMへ変化した。7)“F"変異酵素の前駆体蛋白をトリプシン処理し成熟体蛋白にすると活性が失われた。
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