平成6年度には体外受精・胚移植法で治療中の女性(102名)の心理状態を心理検査と半構成的面接により把握し検討した結果、1.体外受精による治療患者は、不妊治療に伴ってひき起こされている不安が強いこと、2.体外受精による治療患者の不安と不妊治療の背景とに明らかな関連はないこと、3.体外受精による治療患者で不安の強い者の性格特性と治療への受け止め、不妊という事実の受容過程の特徴が明らかになった。 平成7年度は、修正した研究目的に従い、質問紙調査は88組の不妊夫婦に依頼し、夫婦ともに有効回答が得られたのは54組であった。半構成的面接では、最低2回以上の面接によって研究データを得る必要があったので、研究承諾が得られ研究データを得られた対象者は12名であった。SAT1と夫婦調整テストの対照群として妊娠中期にある妊婦夫婦120組に研究依頼し、夫87名、妻97名の有効回答を得た。得られた研究データを研究目的に沿って検討を加えている。例えば、不妊夫婦と対照群である妊婦夫婦について夫婦間調整テストの得点を統計的に比較検討した結果、1.不妊夫婦の合計得点は不妊の背景や結婚期間などとは有意な関連は認められず、2.不妊夫婦の平均得点は妊婦夫婦のそれより有意に低いこと、3.妊婦夫婦の得点分布が一峰性であるのに、不妊夫婦の得点分布が二峰性であることが明らかになった。すなわち、先行研究の結果とは多少異なり、夫婦関係が悪化している夫婦と、良好である夫婦と2つに分かれるということが推測された。以上のように不妊である夫婦の特徴や不妊を体験している女性の心理について検討し、看護の方向性を考察している。
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