急性心筋梗塞患者の洗髪時の血行力学的変化を明らかにし、適正なリハビリテーション・プログラムを立案するために検討した。 対象は、昨年度に加えて急性心筋梗塞群52例、健常群45例とし、延べ175例に対し、入院早期6±1.9病日、慢性期19.7±7.2病日に仰臥位による洗髪を実施し、さらに、29.5±6.1病日には前屈位による洗髪を実施した。洗髪方法としては、対象群に日本コーリン社製血圧連続監視装置を装置し、洗髪前、中、後の血圧、心拍数およびPRPを1分毎に測定し、洗髪前の3分後の値をコントロール値とした。ついで、アトムHL洗髪車NS952を設置し、一定の手順で洗髪を実施した。すなわち、40℃の湯を頭髪にかけ、二回の石鹸洗髪、すずきを行なった後にタオルで清拭をしドライヤーで乾燥をした。洗髪後は数値がコントロール値に復するまで観察をした。 早期の洗髪労作時においては、急性心筋梗塞群に比べ、健常群において、収縮期血圧、拡張期血圧、心拍数およびPRPの有意な減少が示されたが、その変化率は10%以内であり、心筋梗塞群では、健常群に比べ有意に軽度な変化を示した。 心筋梗塞群の早期および慢性期の両時期において、仰臥位で洗髪を実施した35例について血圧、心拍数およびPRPの変化を対比したが有意な関係は認められなかった。また、3〜5病日の早期に洗髪を実施した23例において、それ以降に洗髪を実施した群とで対比した成績でも有意な関係はなかった。さらに、慢性期の前屈位による洗髪においても、早期仰臥位群との間、および健常群との間でも有意差はなかった。さらに、心筋梗塞群の左室駆出分画、梗塞部位、最高CPK値、年齢などとの関連も認められなかった、従って、合併症のない急性心筋梗塞患者の洗髪労作は、病態が安定すれば、3日以降の早期から実施することが可能であると考えられる。
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