研究課題
1995年度に行った「尿失禁女性の性に関する身体的、心理社会的影響ならびにそれらに対する対処」に関する質的データの分析結果ならびに文献的考察をもとに「尿失禁女性の性への影響質問紙」(ISSQ)ならびに「尿失禁女性の性の影響への対処質問紙」(ISCQ)を作成した。作成した質問紙の妥当性・信頼性を検討するために、尿失禁外来に通院する腹圧性尿失禁ならびに切迫性尿失禁をもつ20歳以上の既婚女性144名を対象に、構成概念妥当性ならびに併存妥当性、内的整合性の検定を行った。因子分析の結果、ISSQは、「性行動への能動性」「つながりの広さ」「パートナーとの関係性」「自尊感情」「性行動に伴う症状」「静的欲望の強さ」の6因子が描出され、ISCQは「尿漏れへの備え」「パートナー関係の強化」「性行動への備え」「取り繕い」「サポートネットワーク拡大」「封じ込め」の6因子が描出され、因子の累積寄与率はそれぞれ、69.0%、59.7%でありほぼ60%以上を確保していた。ISSQおよびISCQの内部一貫性をみるためにCronbach's α値を算出し、それぞれ0.90、0.87であり、両者とともに内部一貫性の高い質問紙であることが明らかになった。ISSQの各因子毎のストレスの程度をみたところ、「性的欲望の強さ」「性行動に伴う症状」といったセクシュアリティの生物学的側面への影響に比して、「自尊感情」「性行動への能動性」「つながりの広さ」などセクシュアリティの心理・社会的側面への影響を強く受けていた。以上の結果と文献的考察に基づき、Johnsonが規定した看護介入モデルの構成概念に依拠して「尿失禁女性のセクシュアリティの充実を促す看護モデル試案」を作成した。看護介入様式としては、(1)尿漏れへの効果的な備えを促すこと(2)女性として本来の自分が持つ価値を再認識できるよう支えること(3)パートナーとの新たなきづなを求め、互いの立場を分かち合えるよう援助するなどが考えられた。臨床において、セクシュアリティへの影響を訴えていた5名の尿失禁女性を対象に作成したモデルの試験的な適用を行った。その結果、尿失禁に伴う性的な身体感覚に影響を強く受けている患者に関しては、その背後にある強い自己否定につながる様な過去の経験についての専門的なカウンセリングの必要性が示唆された。今後、臨床でのモデルの適用を積み重ね、さらに実践への実用性の高い看護モデルとして洗練したい。
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