平成6年度行った日本の看護者357名からのアンケート調査に引き続き、イギリスの看護者229名から日本で行ったと同様な看護・力労働に係わるアンケート調査回答結果を得た。イギリスでの患者持ち上げ介助は複数人で行うことが原則で、協力者が得られない場合は持ち上げ支援機器を使用することを義務づけたマニュアル・ハンドリング規制(Manual Handling Regulations)が1993年に施行されていたことが分かった。それに係わる教育・訓練が現在のところ完全に行き渡らず、約60%の看護者がその教育・訓練コースを受講したにとどまっている。日英両国の看護者は看護・力作業を支援するため、取り扱いが容易で、スペースをとらず、軽くて力持ちの看護支援補助機器の出現を望んでいることも本アンケート調査によって明らかになった。 看護・力労働に係わるアンケート調査と並行して行った看護・力作業に関する研究では、看護者の両足に装着し看護時の力が測れる力測定センサ(フォース・シューズ)、寄り掛かり力測定センサを東京電機大学側で開発・試作することが出来た。平成7年度購入の備品を使用した予備実験は東京電機大学で行い、また、看護者(看護学生)による臥位患者を座位に抱き起こす実験(患者中心線、その線に対する看護者両足を結ぶ直線との角度をパラメータ)、および臥位患者のずり上げ移動実験(看護者両足開き幅をパラメータ)は研究分担者が所属する自治医科大学看護短期大学で行った。以上の結果、臥位患者を座位に移動する場合、臥位患者中心線と看護者両足を結ぶ直線との角度は約30度が、また、臥位患者をずり上げ移動する動作の場合は看護者足の開き幅は約50cmでしかもベッド端に寄り掛かりながら介助する方法がよいとの結論を得た。
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