平成6年度は日本の看護者357名から、看護・力労働に係わるアンケート調査回答を得た。平成7年度はイギリスの看護者229名からの同様アンケート調査結果を得た。イギリスでは過去1年以内、腰痛で休んだことのある看護婦は、約10%である。これは、平成4年(1993年)にマニュアル・ハンドリング規制が施行された後ということ、過去1年以内に起こした腰痛という制約を設けた質問であったためと考えられる。これに対し日本の看護者は「過去に起こした腰痛」という質問に対し75.4%という高い割合で腰痛を起こしている。しかし、イギリスでも規制前には、腰痛を起こした看護者は日本のそれと同率程度であったという。以上のようにマニュアルハンドリング規制が引かれ、その講習会(教育・訓練コース)の受講が義務づけられ、病棟に「キイ・リフタ-」(患者持ち上げ・移動の責任看護婦)がいる、日本でよく使うボディ・メカニクスという用語は使われず、それに代わる用語として人間工学、バイオメカニズムが使われている、使い勝手がよく、場所をとらない看護支援補助機器を期待していることなどが両国のアンケート調査結果より明らかになった。 看護・力作業に係わる看護者の力測定に関しては、両足に装着し、爪先、踵の床反力が独立に測れるフォース・シューズ、寄り掛かり力が測れる力センサの開発・試作を東京電機大学で行った。それらにより、前屈みでベッド周りの力作業を行う場合の床反力変化、寄り掛かり力などが容易に測れるようになった。開発したセンサを使用し、看護者が患者を介助する場合の力作業を自治医大看護短期大学において実施した。実験により得た床反力に基づき、看護・力作業がある程度評価できるようになった。今後はフォース・シューズをより装着性の良いものに改良すると同時に、看護者の手に加わる力も測れるセンサを開発し、看護者に加わる総合力を基に、看護時の作業負担を評価できるものとしたい。さらに、看護・力作業のデータを蓄積し、将来創造予定の看護支援補助機器の基礎データを継続して取得するつもりである。以上、看護・力労働に係わるアンケート調査および看護労働時の力測定に関し、当初の研究目標を達成できたことをここに報告する。
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