本研究は、臥床安静の患者が長時間の同一体位保持、体位変換によってうける生体への影響を循環動態・呼吸代謝・脳波の側面から検討することを目的に行った。23歳〜64歳の健康な成人延べ18名を被験者にして、全く動かない状態で仰臥位を60分間保持した後、上半身を45°挙上したファウラ-位に体位変換し、さらに60分間保持した条件のもとで皮膚血流量・分時換気量・酸素消費量・心拍数・呼吸数・血圧および情動面の動きを観察するために脳波を測定した。実験の結果、つぎのようなことが解った。 (1)皮膚血流量:右第2指の指腹、右肩甲骨下部の2箇所にセンサーを装着。40分前後になると仰臥位もファウラ-位も振幅が小さくなった。また、時間の経過とともに血流値は低くなる傾向にありファウラ-位に体位変換後も増加しないで下降傾向を示した。 (2)分時換気量(VE)・酸素消費量(VO_2):VEとVO_2から呼吸当量を求めて検討した。この結果、仰臥位、ファウラ-位、側臥位の体位のなかではファウラ-位が正常値の範囲にあり体内に一定の酸素を取り入れるには適切な体位であることを再認識した。呼吸当量の経時的変化をみるとどの体位も40〜50分頃に減少率が最大になった。また、この減少は年令の高い被験者が大きい傾向を示した。 (3)脈拍、呼吸数も40〜50分に変動が最も大きくなる傾向を示した。 (4)脳波は、皮膚血流量や呼吸当量、脈拍、呼吸数のような著明な変動はないが、30〜40分頃のα波がやや減少、δ・θ波が増加傾向を示した。また、身体の苦痛や深呼吸もみられるようになった。 これらの実験結果をもとに、病棟で2名の臥床患者の母趾と上腕内側の皮膚血流量を測定した。この測定を通して、体位変換後血流値は2倍近く増加するが40分頃から減少し、看護婦の声かけや吸引、体位変換で母趾の血流値は減少、上腕内側の血流値は増加することが解った。 (2)(3)の結果については1994年12月の看護科学学会で発表した。また、(1)(2)(3)(4)の関連性および臨床における測定結果については1995年9月の第2回国際看護学術集会で発表する予定である。
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