60分間同一体位保持中および体位変換後の皮膚血流量(右第2指先部)、酸素消費量、分時換気量、呼吸数、心拍数、脳波、苦痛などの経時的変化を観察し、これらの生体情報の変化の関連性を検討した。対象は23歳〜64歳の健康な成人延べ12名と意識状態が低下している76歳の患者1名である。以下その結果を要約する。 (1)同一体位を1時間保持したときに感じる苦痛は、どの体位においても経時的に増強しその時間的経過は酸素消費量と同様な時間が経過を示すが、皮膚血流量は経時的に減少して苦痛とは相反性の時間的経過を示した。また苦痛が同じ状態で持続しているとき、皮膚血流量は減少した状態で小刻みな振幅を繰り返す傾向がみられた。抑臥位を保持した状況における苦痛の増強と皮膚血流量の経時的変化には、負の相関が、酸素消費量と皮膚血流量の経時的変化にも負の相関が認められた。 (2)同一体位の保持による苦痛が急速に増強し始める時間には、脳波の%αパワーが減衰して徐波傾向がみられ、%αパワーが最も減衰した時間より10〜15分後に苦痛がピークになる傾向がみられた。 (3)同一体位を1時間保持したとき、分時換気量、呼吸数、心拍数はあまり変化はみられない。酸素消費量は経時的に増加する傾向を示すが体位の種類によって程度は異なる。胸郭のコンプライアンスや機能的残気量への影響が大きい体位である抑臥位が最も増加し、45分以後は開始時の酸素消費量とでは有意の増加がみられた。 患者の体位変換後の皮膚血流量の増加は著しく、健康者に比べて健康障害がある患者が同一体位を長時間保持したり、体位変換することは生体にさまざまな影響を与えることが推測された。また意識障害がある患者が開眼すると皮膚血流量は増加し、開眼している間血流量は増加したままだった。
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