水を含めアルコール溶液中でセルロースの微細構造がどのように変化するかを、物質の透過拡散性と膨潤度から調べた。 拡散係数は、外部溶液と内部溶液から構成される拡散実験用セルを使用し、セルロース膜をはさんで外部溶液から内部溶液(ブランク液)に拡散透過した拡散質の量を測定し、得られた定常状態での拡散流束(J_<slope>)から拡散係数(D_m)を算出した。 外部溶液は、水とエタノールの割合を100/0、75/25、50/50、25/75の数段階に変えた溶液を溶媒とした。拡散質として当初、水溶性および水不溶性のカルボン酸を使用する予定であったが、低級の酢酸でさえ、濃度によって溶解狂態が種々異なることが明らかとなり、10^<-4>〜10^<-3>mol/LでLambert-Beer則の成立する2、4-ジニトロアニリン(2、4-DNA)および、2、4、6-トリニトロフェノール(2、4、6-TNP)に変更した。 その結果、溶媒中のエタノールの割合が増加するほど拡散係数は減少するが、いずれも50/50〜25/75付近で極小となり、2、4-DNAではさらにエタノールの増加に伴い再び増加する傾向が見いだされた。これは先に得られた、“アルコール水溶液中で著しく綿に対する反応染料の染色性が低下し、同様に極小値が現れる"現象と一値するものである。一方これらの溶媒中でのセルロース膜の膨潤度は、エタノールの割合の増加に伴い単調に減少し、拡散係数は膨潤度のみの関数ではないことがわかる。ポアモデルから、膜中と液体中での拡散係数の比を、膜の多孔度と曲路率との比と仮定すると、エタノール含有率が増加するにつれ多孔度が著しく減少することが推定できる。
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