目的 中国では、学校教育の中で育児に関する教育はほとんどなされておらず、家庭教育、社会教育として行われている。一方、日本においては、中学校、高等学校家庭科に保育領域が含まれているが、現在の日本の成年男子は中国の場合と同様に学校教育で育児について学んでいない。このような日本と中国とでは、結婚前の男女が、子どもに対してどのような感情をもっているのか、親になることについてどのように考えているのか、また、子どもの発達や保育に関する知識はどの程度かなどについて調査を行い、その日中比較から、今後の保育教育の方向性を検討した。 方法 日本と中国の学生を対象に、調査用紙(日本語版、中国語版)を作成し、日本と中国で調査を行った。調査機関は1994年5月末から6月末である。 結果 日本の学生466名(男子161名、女子305名)、中国の学生428名(男子198名、女子230名)から回答を得た。中国の学生は、「赤ちゃんの泣き声が耳ざわり」、「子どもがうるさくしているといらいらする」と答えた人が多く、日本の学生ほど、子どもに対して良い感情をもっていないことがわかった。また、中国では、子どもは親の言うことに従うべきであり、子どものわがままを認めないとする傾向があり、子どもを育てたくない人が日本より多くみられた。さらに、「親になったら子どものためにがまんばかりする」、「子育てとは毎日同じことの繰り返しである」など、ネガテッブな認識をもっていることがわかった。以上のことから、中国においては、子どもを優しく見つめ、受け入れてあげることができるような情緒面の発達を促す教育が必要と思われる。
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