研究概要 |
石英表面をシランカップリング処理する方法で洗浄のモデル基質を作製した。シランカップリング剤にはΥ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES),メチルトリエトキシシラン(MTES),オクチルトリエトキシシラン(OTES),パ-フルオロエチルトリメトキシシラン(FETMS)の4種を用いた。また,処理後の石英表面にLB膜法でナイロン単分子膜を累積する方法でもモデル基質の作製を試みた。まず,基質表面に対する水の接触角をWilhelmy法により測定した。シランカップリング処理を行うと処理回数の増加とともに接触角が増大し,4回以上で一定値となった。各処理剤で得られたこの一定値は,前進,後退接触角ともにAPTES<MTES<OTES<FETMSとなり,処理剤の化学構造からのぬれ特性の予想とよく一致した。処理後の石英にナイロン単分子膜を累積すると接触角が減少し,さらに累積後の時間経過とともに接触角が変化し,膜分子の再配向が示唆された。ナイロンLB膜を洗浄基質として用いるにはさらに検討を行う必要があると思われる。次に,シランカップリング処理した石英に対する球形ポリマー粒子の付着現象を調べた。粒子水分散液中に基質を1時間浸漬したときの付着粒子数を顕微鏡で計数し,付着粒子数と基質の接触角の関係をプロットした。その結果,ある接触角で付着粒子数が極大となり,水中では90°程度の前進接触角をもつ基質に対して粒子が付着しやすいことがわかった。水にエタノールを添加すると付着粒子数は激減し,エタノールの付着抑制効果が明らかとなった。さらにL-α-アラニン,マルトースおよびマルトヘキサノースを添加したときの付着粒子数を調べた。エタノールほど顕著ではないが,いずれも付着抑制効果が認められ,とくにL-α-アラニンではかなりの効果が認められた。この結果から,アラニン以外のアミノ酸やオリゴペプチドについても付着抑制効果が期待され,この点について今後検討して行きたい。
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