研究概要 |
一日のエネルギー代謝量は,人でも動物でも,主に,基礎代謝量(BMR),特異動的作用(SDA又はDIT),流動代謝量(Activity)に区分されて考えられいるが,それらを個別に測定して比較することは,出来ても同時に測定して一日の代謝量を研究することは,出来ていない。 そこで,本研究では,飼育環境下にあるラットの一日のエネルギー代謝量の連続測定データを基にして,一日のエネルギー代謝量の新しい区分法を確立した。 まず,単位時間(普通10分)当りのデータをコンピュータにとり込み昇べき順に並べグラフ化した。ついで基本値としてその日の最小代謝量(MEE)を設定した。この値が、その日の基礎的代謝量となる。次に、最大安静時代謝量(RMR_<max>)を次の方法で求めた。すなわち、エネルギー代謝と同時に,今回,初めてアニメックスにより測定した運動量のデータとビデオテープに収めたラットの雲像解析による移動量のデータを,昇べき順に並べたエネルギー代謝のデータに対応させてグラフ化した。すると,エネルギー代謝のグラフでは、最初MEEから始まって勾配の緩やかな安静時のデータが並び、その後、急にレベルが変化する点が観察された。この変化点では、なんらかの動作が加わったものと推論され、この点の代謝量がRMR_<max>ではないかと思われた。この推論が正しいことは,エネルギー代謝のデータと対応してグラフ化した運動量と移動量がその変化点を境にして急増することで明白に確認出来た。 MEEを、その日の基礎的代謝量とすると、MEEからRMR_<max>までの積算値は,食事を主とする一日の環境刺激に対して行動を伴わないで安静代謝が亢進した分(Elevated Internal Activity)となるので,それをEIAと定義した。RMR_<max>以上の分は,当然,行動を伴なう代謝量(External Activity)となるので、EAと定義した。このようにして,飼育環境下(もちろん温度は一定)にあるラットの一日のエネルギー代謝量を,正確に測定してMEE,EIA,EAの三区分にすることに成功した。この結果,食事や運動などによって一日のエネルギー代謝がどのように変動するか,又,どのように個体が活動的になるかなど,行動の定量的解析を軸にして,種々な研究を展開することが可能になった。 成果は,日本栄養,食糧学会で口頭発表したが,アジア栄養学会議(1995年,北京)でも発表する予定である。
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