研究概要 |
本年度は、建替事業対策となっている昭和30年代建設の公団住宅の居住水準および建替事業動向の把握と,建替え前後の空間特性の変化,および建替えによる一般的な問題点を観察・ヒアリングおよび既往研究によって把握することにつとめた。その結果、以下の点が明らかになった。(1)昭和61年度の建替事業の開始以来,関西地区では22団地1万400戸の建替事業が進行しており,1884戸が建設入居済(賃貸8割,分譲2割)となっている。従前住居者の戻り率は団地によって異なり,最高87%,最低28%であった。(2)建替前後の空間変化の特性として,容積率増加(60%〜80%→150〜200%)とそれに伴う建物の高層化,住戸面積の増大,住戸内設備の高度化などが挙げられる。また屋外スペースとの関連では、駐車場率の増大と,住棟の高層化により従来の段階室型中層住宅と比べて地上と住戸相互の交流が希薄になりやすいこと,園芸などの従来よく行われていた屋外活動があまりみられないなどの変化が観察された。(3)建替に伴う一般的な問題としては,空間の変化以外に家賃の高額化の問題があり,済み慣れた団地に過大な負担を伴うことなく住み続けたいとする居住者の希望を実現できる家賃減額制度のあり方や,また建替事業への居住者参加などのあり方も大きな課題であることが明らかになった。 以上の観察,ヒアリング,既往調査研究を通して,次年度は住居者調査を広範囲に実施し,空間変化によるマイナスの影響を最小限に抑えること.建替事業への住居者参加による望ましいコミュニティ形成のあり方,住み慣れた地域への住居継続の保障のあり方,等について研究を進めていく予定である。
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