研究概要 |
住宅・都市整備公団では,昭和30年代に建設された団地の建替え事業が断続的に進められているが,建替え後の団地に戻り入居した人々が,更新された住環境をどのように評価しているかを把握するために,アンケート調査を実施した。 調査対象団地は大阪市内の3団地(東三国,東長居,出来島)で,一部にヒアリング調査を交えながら442世帯から回答を得た。また,戻り入居せずに他地区の公団住宅や民間住宅などに移転した元居住者にたいしても,移転理由などを問う調査を実施した。 その結果,以下の知見が見出された。 団地全体の戻り入居率は,家賃減額制度などの適用によってかなり高く,約6割となっている。そのため,戻り入居世帯の特徴としては,居住年数が長く,高齢化率が高いこと,また今後の年収増加も見込めない世帯が多いこと等,があげられる。 居住性評価のうち,住宅の高齢化対応に関しては,実際にはエレベータ-の設置,1階住戸の手摺の設置や浴槽の落とし込みなどがある程度なので,2階以上住戸への適用拡大等を含め,より一層のバリアフリー化を望む声が強くみられた。また居住者は,住棟の高層化に関して,階段利用から開放されるエレベータ-の設置を評価するなど,全体としてプラス評価を与えていた。しかし,従来の中層住宅が持っていた「人の気配を感じとれる」空間の喪失を指摘する者も多かった。 戻り入居者は,全体として建て替え後の住宅にプラス評価を与えていたが,傾斜家賃制度の下での最終家賃が建て替え前の3倍にも上がるため,今後も住み続けることに不安を抱く居住者も多くみられた。
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