研究概要 |
魚臭の矯臭における鰹節菌の機能性の解明とリポキシゲナーゼ(LOX)阻害剤の探索を行なった.本菌のアルデヒド分解とLOXの阻害における代謝産物又は生菌体の関与を明らかにし,微生物を利用した新しい食品加工技術を開発し,多獲魚の有効利用に寄与することを目途とした. 1. Eurotium属菌体(鰹節製造菌)の機能性の検討 (1) Eurotium属の菌体をイワシと混合すると,propanalと1-penten-3-olの生成が特異的に減少し発臭が顕著に抑制された.油脂の過酸化物価も低く,高度不飽和脂肪酸の酸化も抑えられた.また,菌体から代謝産物を抽出し,比較的強いイワシのLOX阻害物質を単離,精製した. (2)魚臭成分であるアルデヒド類を菌体で処理すると,短時間で相当するカルボン酸やアルコールに転換した. (3)鰹節菌体を添加してイワシの乾燥加工品の貯蔵試験を行うと,官能的にも魚臭が低減され,有効性が確認された.鰹節菌による魚臭の矯臭は, LOX阻害とアルデヒド類の分解にあると予測された. 2.微生物起源の酸化酵素阻害剤の探索 (1) Aspergillus terreusと同定した1菌株の培養ろ液抽出物からイワシのLOX阻害物質を単離し,新規物質の1, 3-dihydro-7-methyl-4, 5, 6-trihydroxy-isobenzofuran (A)と同定した.極めて強いLOX阻害剤であった. (2) Penicillium daleaeと同定した1菌株の培養ろ液抽出物から3種の有効成分を単離した.微量の新規物質,2, 3-diacetyl-4, 5-dihydroxy-6-methoxy-benzene,の他に,vulculic acidとdemethyl-curvulic acidを同定した. LOX阻害活性は, Aに比較して余り強くなかった.
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