研究概要 |
申請者が発見したソバ粉蛋白質固有の分子量25kDaのサブユニット『FE25蛋白質』は、ソバ粉の全蛋白質量の約80%を占める可溶性蛋白質唯一の主要な蛋白質であること、アレルゲン性を持つこと、などからソバ蛋白質の構造と機能に密接に関係している。本研究は、遺伝子工学的にソバを形質転換し最終的にそばの品質改良を目指した。 ソバの主要蛋白質(FE25)は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)では見かけの分子量が約25,000の単一ポリペプチドである。平成6年度にソバの主要蛋白質(FE25)の精製を行った結果、SDS-PAGEで精製標品が単一バンドであることを確認した。しかし、二次元電気泳動法(等電点電気泳動:SDS-PAGE)では当該FE25は少なくとも5個のポリペプチドからなる複合体で、そのうち3個は弱酸性から中性(pH5.7)の蛋白質、他の2個は塩基性(pH8-9)蛋白質であることが明らかになった。6年度の予想外の事態のため、平成7年度は急遽戦略を改めて、DNA断片を抽出し、遺伝子クローニングを行った。即ちコメ蛋白質グルテリンのcDNAクローニング法(荒井と阿部、必須アミノ酸研究、122、1989)に従い、先ず完熟したソバ種子より抽出したDNAを制限酵素Sau3AIで部分消化し、定法に従い蔗糖密度勾配法により15-20KbpのDNA断片を分離精製した。これらのDNA断片を順次ファージベクターλEMBL3に挿入して遺伝子ライブラリーを製作し、スクリーニングに有効なcDNAを検索中である。
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