研究概要 |
本研究は,これまでの「九州における高齢者の生活実態」と題した調査研究の成果を受けて行なったものである.これまでの研究成果は,平成7年度3月に九州大学出版会より出版予定の『高齢者生活文化の創造-人生100年を生きる-』に,「多様な高齢期の生活形態に向けての意識変革」と題して発表する.今後の高齢者のあるべきライフスタイルを決定していくポイントは「夫婦関係重視」であるとの結論を得た.そこで,中年期における夫婦が,現在,どのような伴侶性を得ているのか実態を把握し,さらに,どのような伴侶性を形成していくのが望ましいのか,モデルを提示したいと考えている. 今年度は,夫婦の伴侶性についての実態を把握するために行なった予備的調査のデータを分析するとともに,「伴侶性」の概念について考察した.予備的調査は,1991年に60歳未満層,1992年11月に60歳以上層について,佐賀市及び周辺地区で配票法により実施した.有効票は899である.質問は,夫婦間における行動と意見に一致・不一致,また,満足・不満足の程度をはかるように作った.これを,20〜30歳代を若年層,40〜50歳代を中年層,60歳以上層を高年層として,年齢層と性別によって分析した.結果は,(1)総体的には,若年層と中年層との変化よりも,中年層と高年層に生じる変化の方が大きく,(2)その変化は,より夫婦間の一致と満足に傾く.(3)各年齢層を分ける最大の項目(要因)は,「夫婦で一緒の余暇」である.つまり,本調査結果からは,行動面での夫婦間の一致が,結婚幸福度や日常のストレスの低さに貢献するという結論を導いた.また,夫婦の伴侶性の概念として,夫婦間の情緒面だけでなく,行動面における一致の重要性を欠くことができないことを示した.ここまでの研究成果は,平成6年度の九州家政学会(11月,沖縄)で発表した.また,大学紀要への投稿を準備中である.
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