本研究は、同一住居で寝食を共にしている家族の一人一人が日常生活において自立することが可能であるような住居計画について検討することを目的としている。なお本研究では、自立の定義を「生活的自立、すなわち生命維持のための最低限の生活行為ができること」とし、生活管理関連の住空間を主に扱う。家族の自立を生活管理の視点からとり上げて住居計画的に考察することは、今後の長寿化・女性の社会参加志向増大の社会情勢において意義あることと考える。 今年度は、テーマに関連する海外の文献を集めると共に、次の(1)〜(4)について調査し考察した。(1)主婦の個室所有が家族の自立、および家族間のコミュニケーションに及ぼす影響、(2)男性が台所作業に関わりやすくなるための条件、および(3)高齢者の自立意識を低下させない台所の条件、(4)家族の自立を支援する地域の条件、をとりあげた。なお(3)については一昨年の調査結果に補足調査を加えたものである。その結果、(1)個室有の主婦の場合子供が社会人より学生の方が、また親同居無より有の方が、「主婦の個室がある方が家族が自立する」を認める割合は高い。個室無の主婦の場合それを認める主婦が1/3程度で、個室有の主婦より少ない。主婦の個室有層の実態から、家族間コミュニケーションへの顕著な影響はみられなかった。(2)男性の食家事参加を促す上で、空間的要因は食家事参加継続のために必要である。男性にとって「気軽に入れ、居心地がよい」台所とは、独立のK、Lでないこと、LDKが視覚的につながっていること、などである。(3)高齢者の自立持続は台所の空間的条件に依るところが多い。(4)ペット飼育は、とくに集合住宅の場合、地域住民との共生関係を前提にして可能となるが、空間的条件を整えることで生じる問題を緩和させ生活的自立をより容易とする。
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