本研究は、家族が自立的な生活が可能であるような住居計画について検討することを目的としている。自立とは「生活的自立、すなわち最低限の家事労働を主体的にできること」である。したがって本研究は、家族の家事労働関与、家族各自による生活管理を前提にした生活様式の創造を目標とするものである。 本研究は主に二通りの方法で進めてきた。一つは、家事労働の担い手に関する固定的考え方の見直しであり、一つは、作業場としての家事労働空間の見直しである。前者については、主婦の居場所(個人的空間)を確保することを検討した。これは、家族全員に家事労働の担い手意識を持たせ家族全員の家事参加意識を育成するためである。後者については、主として台所をとりあげた。従来は主婦にとって作業しやすいことに主眼をおいた台所計画であったが、男性の立場から、あるいは健康な高齢者の立場からみた使いやすさについて検討した。また家族の誰もが入りやすいコミュニケーション空間としての台所のあり方についても検討した。 結果は次の通りである。(1)現状では主婦の約6割が個人的空間を所有しており、主婦独自の生活の場を確保する傾向にある。(2)主婦の個室所有は家族間コミュニケーション上とくに悪影響はない。(3)「主婦が個室を持つ方が家族は自立する」ことを認める割合は、個室有の主婦で約5割、個室無の主婦は約3割であった。(4)台所空間をコミュニケーションの場とする意識は高齢者夫婦において高い。(5)男性の食家事参加を促すためには、きっかけとなる要因、および継続させる要因とが必要。特に後者は空間との関連が強い。(6)高齢者の自立持続という視点から台所条件を検討することは今後必要であると思われる。
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