研究概要 |
【目的】通常の凍結は大気圧下で行われるため、食品中の水分が体積膨張し細胞破壊が起こる(氷I)。高圧下では0℃でも凍らない不凍域(液相)や、密度が大きく水に沈む高圧氷(氷II〜IX)の存在が確認されている。氷I、III、V、VIおよび固相と液相の境界域、およ液相にニンジンを保持したときの組織、物性、ペクチンの変化について検討を行った。 【方法】ニンジンの円盤(φ15×H5mm)を真空包装後、神戸製鋼所製食品高圧処理装置、(A)プログラム式装置(圧力容器φ25×H80mm、能力400MPa,-30℃)または(B)Dr.Chef(φ60×H200mm、能力700MPa,-20℃)で高圧冷凍した。 【結果】(1)組織学的変化:(A)50MPa、100MPa、-15℃(氷I)で高圧冷凍すると凍結膨張による損傷が大きかったが、100MPa、-10℃(液相、固相の境界)および200MPa、-20℃(液相)に保持した試料は液体窒素で急速凍結した後も組織的に良好であった。また、240MPa〜280MPa、-25℃(氷III)で高圧冷凍したものは比較的損傷が少なかった。(B)生、ブランチング試料を100〜700MPa、-18〜-20℃で高圧冷凍後、光顕およびクライオSEM観察すると、100MPa(氷I)、700MPa(氷VI)での損傷は大であったが、200〜400MPaの組織は良好であった。500、600MPa(氷V)も比較的良好であった。 (2)物性の変化(B):100MPa、-18℃(氷I)で高圧冷凍後自然解凍すると、ドリップが多く相当軟化し歪率が高く生の物性と相当異なった。200(液相)、340(氷III)、400MPa(氷V)ではドリップ量が少なく、生と同様の硬さを維持し、歪率の増加もわずかであった。700MPa(氷VI)-18℃で高圧冷凍したものは硬さを維持しているがドリップ、歪率が増加した。 (3)ペクチン質の変化(B):生を高圧処理すると圧力の上昇とともに低エステル化度のペクチンの割合が増加した。高圧冷凍すると-30℃で通常の冷凍したものと比べ、ペクチン質の損失は少量であった。 【結語】液相、液相・固相の境界、氷III,氷Vで高圧冷凍すると、組織的に良好で、ある程度軟化防止効果があった。氷Iは凍結膨張により、氷VIは超高圧により組織の損傷が大きく、ドリップの増加、物性の変化が著しかった。
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