研究概要 |
本研究の目的は色刺激のもとで,香り物質の心理的・生理的反応がどのように影響を受けるかについて検討することである。本年度はまず「におい」と色の連想の関係を調べるために,グリーンノート,マリンノート,タイワンヒノキ材油,オケンジ果皮油,レモン果皮油など8種類のにおい物質を99名の女子学生に吸入させ,「におい」から連想する色を120色の中から1色を選ばせた。その結果,オレンジ果皮油からの連想はオレンジ色系に,レモン果皮油からの連想はレモン色系に集中し,他の場合に比べて集中度が高かった。そこで、におい物質としてはオレンジ果皮油とレモン果皮油を用い,またオレンジ色(マンセル値4.46YR,6.58/14.37)とレモン色(マンセル値5.11Y,8.54/10,60)の綿ブロードのカ-テンを作成し,このカ-テンで四方を覆って色刺激とした。 次にオレンジ果皮油とオレンジ色,レモン果皮油とレモン色について,嗅覚と視覚の単独及び複合の影響について,心理的・生理的の面から調べた。嗅覚刺激は空気の吸入を対象とし,視覚刺激は閉眼状態を対象とした。なお,心理的測定はSD法による官能評価と感情プロフィール検査であり,生理的測定は血圧,R-R間隔(心電図),R-R間隔変動係数である。測定の結果,(1)感情プロフィール検査では、複数の感情尺度において複合刺激は単独刺激を単純に相加した変化を示さないこと,(2)血圧及びR-R間隔では,オレンジとレモン共に,複合刺激は色の単独刺激を単純に加算した傾向にあることが明らかになった.これらに関しては,次年度さらに詳細に考察する.
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