植物性香り物質を中心に、香り物質の心理的効果と生理的反応について色刺激を人間に付加した場合の影響を考察した。 この研究を進めるにあたり、まず香りと色のイメージの関係を明らかにするために官能検査による調査を行った。この官能検査に用いた香りは、オレンジ果皮油、レモン果皮油、αピネン、ヒノキ材油、オイゲノール、ジャスミン、ペパ-ミント、グリーンノート、マリンノートなど12種類である。約100名の被験者による2回の調査から、連想色が集中する香りとばらつく香りがあり、印象しやすい香りは選択する色が集中する傾向にあり、その代表はオレンジとレモンの果皮油であった。 次に連想色が集中しやすい物質に注目し、オレンジとレモンの果皮油を用い、連想色の色刺激を付加した場合の心理的・生理的反応の効果を検討した。色刺激の付加には連想色のカ-テンで四方を覆う方法を用いた。心理測定はSD評定、感情プロフィール検査、生理測定は血圧反応、心拍反応である。実験の結果、平均血圧、脈拍数については、視覚・嗅覚複合刺激の場合には、それぞれの単独刺激の場合の加算的な変化を示すが、RR間隔変動係数については複合刺激の場合には加算的な変化を示さなかった。また、感情のプロフィール検査については、複合刺激の場合には、それぞれの単独刺激の加算的変化を示さないが、RR間隔変動係数の変化とはよい相関が認められた。 本研究により連想色の集中するオレンジとレモンの果皮油の場合、色刺激の付加は嗅覚刺激による生理反応に影響を与えることが明らかになった。
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