1.染色繊維に対する紫外線の影響は、様々な性能の変化として現れる。最も直接的な変化は、破断の伸度が減少し、強度が減少する。この時、強伸度曲線自体は未照射試料のものとほぼ同一の形状を残し、破断点の位置のみが曲線に沿って低下の方向に移動する。この挙動は、破断点における伸度と強度の相関を示す回帰直線が、破断点における強伸度曲線の接線に一致することからも証明されるが、未染色の原糸を紫外線照射した場合にも観察される。すなはち、紫外線照射は引っ張りにおける繊維の変形機構を、少なくとも破断点までのそれを変えないと考えられる。 2.ナイロン6繊維に対し、紫外線照射の時間を2から6時間まで変えた場合、破断点の強度あるいは伸度は一様に低下していく。しかし、低下の程度は繊維の処理によって異なる。未染色原糸、および、分散染料オレンジIIIを用い、浴比を変えて処理した染色繊維、染料無しで染色と同一条件の処理を受けた対照繊維の3種について、例えば6時間暴露における破断時の強度、伸度を比較すると、およそ次のようになる。未照射に比して未染色原糸の破断伸度は61%、破断強度は92%に低下する。対照試料では、それぞれ69%、85%、浴比の低い染色試料において69%、82%、浴比の高い染色試料において65%、81%に低下する。対照試料と染色試料を比較すると、染色によって明らかに紫外線暴露の影響が促進されることが分かる。 3.ガラス転移点と処理温度の関係で非晶域の緩和、微結晶の生成、結晶の完全性増加などを生じ、染料の存在はその傾向を強めるとみられる。微結晶の増加は繊維の伸長回復率を妨げ、脆性化する。紫外線は微結晶を破壊し、分子鎖切断をもたらし、破壊点となるよう働くと推論される。
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